見どころ
韓国社会における格差と女性の生きづらさを描く衝撃的なドラマ。
ニックネーム「マドンナ」と呼ばれる若い女性の壮絶な過去が徐々に明らかになり、観る者に深い衝撃を与える。女性のシン・スウォン監督が描き出す韓国の現実は、非常にシリアスで心に響く。
ストーリー
准看護師のムン・ヘリム(ソ・ヨンヒ)は、VIP病棟で全身麻痺の老人チョルオの世話を任されることに。ある日、妊娠中の若い女性チャン・ミナが、交通事故で脳死状態に陥り病院へ運ばれてくる。
彼女は「マドンナ」と呼ばれる女性、彼女の過去や人生にまつわる秘密が次第に明らかになっていく。
感想
生きづらさ?セクハラ?そんな生易しいものじゃない
「格差社会・韓国における女性の生きづらさを描いたドラマ」という宣伝文句が書かれてるけど、そんな軽い言葉の話じゃなかった。
セクハラという言葉さえマイルドに感じる、どんな韓国社会だよ。
ソ・ヨンヒが主演と知って、あーはいはい、酷い目に会う女優ナンバーワンのソ・ヨンヒがひどい目に会う映画ね、と思ったら、ソヨンヒじゃない人がものすごくひどい目に遭っていたという話だった。
「マドンナ」に込められた意味
マドンナというあだ名のチャンミナ、そのあだ名の由来もひどいけど、とにかく彼女がとてつもなく不遇な目に遭う。かなりえぐえぐな性虐待シーンがある。
なんだけど、自業自得といえば自業自得な気もしなくもないんだよね。たぶん男側からしたら「向こうが誘ってきた」と言うと思う。
もっとガードをしっかりしろや、とも思ってしまうけれど、チャンミナが「誰かに愛されたかった」、という悲痛な気持ちも理解できる。だから悲しい。
女性監督ならではの視点
もし男性監督がこの題材を手がけていたら、まったく違う印象を受けたかもしれない。シン・スウォン監督の女性目線が、物語にリアルさ生々しさが加わってる。実際こういうことが現実にあるんだろう。
役者陣の演技が光る
チャンミナを演じたクォン・ソヒョン、どこかで見たことが、声に聞き覚えが、、と思ったら、『奈落のマイホーム』の奥さんだった。あと私が見たところでは『暗数殺人』や『虐待の証明』でも出てたのね、要チェックだわ。
富豪の息子役を演じた韓国のレスリーチャンことキム・ヨンミンも、性格悪い金持ちボンボンがぴったり、ただ嫌な役柄ではなく、ラストで息子らしさを見せたのが粋な演出だと思った。
ピョン・ヨハンの医師役も良かったけど、彼の見せ場やソヨンヒとの絡みがほとんどなかったので、他人って感じがしたのが少し残念。
マドンナが聖母になった
トランクを沼?に捨てるのはちょっと本当にやめてほしいつらかった。けれど最後、聖母のようなチャンミナに救われた描写は綺麗だった。
けど結局あの子はソヨンヒが面倒みるのではなく施設送りってこと?辛い境遇で育つ子供が多い中、将来が心配だよ。
バスでウェディング写真を見つけるシーンも良い余韻だったけどね。
文学的であるよりも、ベタでもハッピーエンドを見たかったのが個人的な意見。
起承転結
起:上流階級が集まるVIP病棟の看護師となったヘリムは、病院の裏側の汚さを知る。
承:富豪の延命のために運ばれたドナーの女性が妊娠しており、ヘリムは金のために彼女の身辺調査を引き受ける。
転:調査を進めるうちに、ドナーの悲惨な人生が浮かび上がり、ヘリムも過去に赤ん坊を捨てた経験があることが明かされる。
結:赤ん坊を救うため、ヘリムは富豪の延命装置を抜く決意をする。
映画情報
原題:마돈나(マドンナ)
制作年:2015年
監督:シン・スウォン
主な出演者:
ソ・ヨンヒ(ムン・ヘリム/看護師)
キム・ヨンミン(サンウ/富豪の息子)
クォン・ソヒョン(チャン・ミナ/マドンナ)
ピョン・ヨハン(イム医師)
ユ・スンチョル(植物状態の富豪)